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自殺や一家離散といった深刻な問題を引き起こしているヤミ金融の根絶を図る法律が、今国会で成立する見通しとなった。

 

 与野党が四日合意した貸金業法等改正案は、無登録営業(ヤミ金融)に対する罰則を強化し、取り立てに絡む禁止行為を具体的に示した。近く国会に提出される。

 

 無登録営業に対する罰則は、▽五年以下の懲役または一千万円以下の罰金、法人は一億円以下の罰金とし、強化する▽出資法の上限金利(年利109・5%)を超える違法な貸し付け契約は無効とし、利子の返済を求められなくする▽暴力団関係者など不正をはたらく恐れのある業者の登録申請を拒否する、などの内容だ。

 

 人が寝静まった深夜の督促や、職場に押しかけたり、知人や親類らに肩代わりを求めたりする行為も厳しく規制する。

 

 実現すれば、ヤミ金融業者を抑え込む有力な手立てとなろう。しかし、これだけで問題が解決すると思うのは早計だ。

 

 ヤミ金融の実態は、借り手の窮状につけ込み、法外な利息を絞り取る悪徳商法だ。少々の法的規制でへこたれる相手ではない。八尾市で先月起きた夫婦ら三人の心中事件が端的に示す。

 

 四月に業者から一万五千円を借り、一カ月余りの間に十万円を返したのに、業者は近隣や親族にまで電話を掛け厳しい取り立てを行った。夫婦は、警察に二度相談したが、解決につながる対応をしてもらえず悩み抜いた末に電車に飛び込んだ。

 

 債務者の多くは少額のお金にも困る経済的弱者であり、周囲に法律に通じた相談相手がいない。違法な貸し金契約との認識がないまま法外な利息を支払っている。

 

 明らかな犯罪なのだが、警察は概してこの手の相談に冷たく、通り一遍の対応しかしてこなかった。行政も同様だ。ヤミ金融の根絶には、こうした業者を一掃する強い決意が行政にも警察にも求められる。そうでないと、いくら法律で規制しても、陰湿な貸し付けや取り立てはなくなるまい。

 

 違法貸し付けの元凶は、業者間でやりとりされる多重債務者のリストだ。そうした個人情報の流出も排除したい。必要なら立法措置を講ずるべきだ。

 

 借り手対策も真剣に考えるときではないだろうか。債務者の掘り起こしと生活相談を充実させ、家計再建の支援も行ってはどうか。わずかなお金のために破滅を招くような状況を生み出さないことが大切だ。

 

 いずれにせよ規制・取り締まりと債務者支援はヤミ金融対策の両輪である。法整備を一歩として強い決意で対策を進めたい。 

『神戸新聞より』

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